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 平成30年9月22日(土)に群馬県館林市の館林市三の丸芸術ホールで開催された第66回全国高等学校決勝弁論大会に本校3年の奥寺里沙さんが出場しました。7月の原稿審査を経て弁士の一人に選ばれました。出場者は,北は北海道から南は岡山県までの22名です。奥寺さんは,17番目に登壇し,見事な弁論を発表しました。
 大会前日には,交流会があり,全国から集まった弁士と親交を深め,大会への意気込みを語り合っていました。
 
 
演題 コンビニエンスストアで見つけたもの
発表論旨
 私は,コンビニエンスストアでアルバイトをしている。店員としてのマニュアルはあるが,店長の働き振りから「働く」ということは、マニュアルで動くだけでは、不十分だということに気付いた。お互いが相手を気遣う気持ちを持ち合って初めて正しい働く在り方に結びつくのです。

発表原稿
 「いらっしゃいませ。」私とお客様が繫がる瞬間です。私はコンビニエンスストアでアルバイトをしています。私にの家は、兄弟姉妹が多く経済的にも豊かではありません。看護師になりたいという夢の実現のため、そして家族のためにもアルバイトをする事になりました。家族に負担をかけたくないという気持ちから、アルバイトをするようになりました。
 始めは、仕事を覚えるのに精一杯とのこともあり、ただ学費補助のためと働いていました。アルバイトに慣れてきた頃、「働くと言うことは、マニュアルだけに従って作業するのではない。」ということに気付きました。店長さんは、「陳列棚が綺麗だとお客様も気持ちよく買い物ができるよ。」と言って、棚の商品を並べ替えたりしているのです。
 私も真似をしてみました。
 皆さんはコンビニエンスストアで買い物をする時、どんな所を見ていますか?陳列棚の先頭がデコボコしていると、見た目がよくありません。見栄えが良くなるように、お客様が手に取りやすいようにと、こまめに先頭を揃えるようにしています。また、コンビニエンスストアは、様々なお客様が来店します。時間帯により客層も売れるものも異なるため、私は時間帯で変わるお客様の目線を意識して、商品の配置を替えるようにしました。すると、お店のデータから以前よりお客様がたくさん来店していることが分かりました。何よりお店がきちんと整理されていて、快適に買い物が出来る環境になりました。私自身も気持ちよく働いています。次第に、お客様と積極的にコミュニケーションを取れるようにもなりました。困っているお客様がいたら声をかけたり、レジを打つ時も少しずつ会話するようになったり…繰り返し来店して下さる方や挨拶などの言葉かけをして下さる方が増えて,やり甲斐を感じています。
 アルバイトを始めた頃と今では働くことに対する心持ちも気持ちよさも,全く変わり、お客様と積極的に関わろうとする自分がいます。
 どうしてだろうと考えた時、去年の修学旅行で、広島の江田島での民泊体験を思い出しました。最初は見知らぬ家庭に入って生活することが不安でしたが、ホスト家族に、温かく迎えて頂き、短い時間でも家族のように打ち解けた関係となりました。それは、ホスト家族が、不安がる私を優しく受け止め、積極的に関わろうとする心遣いがあったからです。お陰で私も積極的に行動することが出来ました。ホスト家族が積極的に受け入れるための努力をして下さったからこそ、最後の最後まで別れを惜しみ合う交流ができました。
 働き側が、他者を受け入れる環境を作っていくことが大切だということです。コンビニエンスストアの店員も看護師も、あらゆる職業が他者なくては成立しません。働くにあたって他者をどのように受け止めるかという働く側の意識・姿勢が大切なのだと気付きました。病院での患者に対する看護師の姿勢、コンビニエンスストアでのお客様への意識姿勢が必要なのです。
 憲法27条 すべての国民は 勤労の権利を有し 義務を負う とあります。コンビニエンスストアでお客様がレジに持って来た商品をただ袋詰めしてお金と交換に渡すのでは、「働く」「勤労」とは言えないのです。
 もちろんマニュアルは必要です。ですがそれだけでは不十分です。他者を受け入れる気持ち・姿勢が必要なのです。人が動くと書いて「働く」ですが、本当は,人が心を動かせて他者と係わることが「働く」ことなのではないでしょうか。
 私は明日もコンビニエンスストアの店員として心を動かして働きます。そして将来は看護師として立派に働き、勤労の義務を果たします。